April, 2017
今回は、フードスタイリスト、料理研究家として、テレビや雑誌で活躍されている野口英世さんのご自宅兼スタジオにお邪魔し、テーブルウェアとリネンの合わせ方、気軽にできるおもてなし、お気に入りの器についてお話を伺いました。
第一話では、コーディネートの役に立つランナーの使い方と、器やファブリック選びのコツをご紹介します。
―― ポイントは器ではなく、布アイテム
コーディネートをする際に「どんな器を買ったらいいか」という質問をよく受けるそうです。器をたくさん集めるよりも器と布の合わせ使いが効果的だと語る野口さん。
「器は料理を盛っていくと隠れて見えなくなってしまいますし、色や柄と料理との兼ね合いも簡単なようで実は難しい場合があります。定番の器を使って、ランナーや小物を変えるだけで何通りも食卓を楽しむことができるのです。」
今回は、どのご家庭にもあるシンプルな白いお皿を使って3種類のランナーとの合わせ方を見せて頂きました。
同じテーブルで、同じ白いお皿を使っても、ランナーや小物を変えるだけで、がらりと印象が変わります。このように、布アイテムを使うと持っている器の見え方も変るので、テーブルコーディネートの幅がぐっと広がります。
―― 気軽に使えるテーブルランナー
「テーブルに一枚布が入ると普段の木目にアクセントがつき、豊かな表情になります。 テーブルクロスだとちょっとかしこまった印象になったり、全体にアイロンをかけるのも大変。敷いたらそのままになってしまうことも…。 その点ランナーは、面積がプレースマット以上、テーブルクロス未満なので、日常使いはもちろん、気軽なおもてなしにも使えます。お手入れがしやすく、収納にも場所を取りません。」
手軽なのに普段の食事もワンランクアップしてくれるランナーは、野口さんの一押しアイテムだそう。
野口さんが器を選ぶポイントは、“ひとつの器からたくさんの料理がイメージできるか”ということ。
「例えば、煮物を盛りたいと思って器を買うと、煮物用の器として思い込み、他のお料理を盛る器として使う事が少なかったりします。いろいろな料理を盛ることが想像できる器をそろえることが大事です。」
―― 自分の“好き”に耳を傾けてみる
「自分の好きなものを実際に並べてみてください。おそらく、その“好き”には何かしらの共通点があります。行き着く先は、自分にとって心地よいと思えるものではないかと思います。」
“好き”と漠然と思うのではなくて、どうしてこれが好きなのか理由をつかむことが大切。
例えば、このエプロンは白なんだけど織があって、ただの面としてでの白ではないからすごく良い、とか、ナチュラルなんだけど上質感がある、などキーワードで言葉にしていくと、自分の欲している物がわかってくるそうです。
自分でわからなければ、周りの目を通して知るのも一つの手段です。
これを着ているとよく似合うと褒められる、このリネンでおもてなしした時にぴったりと言われる、といったことで、実はこの雰囲気が自分に合うのかも、と気づくことができます。
「器同様、ファブリックも質感から、伝えたい雰囲気やニュアンス、受け手の感じ方などを考えながら選んでいます。十年前にいいなと思ったものが、今も良いと感じられるか。流行りだけで飛びつくのではなく、自分が納得したものを手にすれば、そこには自分なりの理由があります。今手に入れるものが未来の自分を方向づけていくのでしょう。十年後の自分はどうありたくて何を選ぶのかは常に根底にある気がします。」
ちょっとしたコツを身につけ、感覚を養うこと。その奥には、自分を見つめ直し、未来を創造していくという視点があったのですね。
次回のコラムでは、実際におもてなしをする時のポイントや、野口さんご自身が愛用されている器についてご紹介していきます。次回もどうぞお楽しみに!