新しいかたち

往復書簡二十三通目

「夕暮れの畑で花と野菜を楽しむ会」の食事風景


前略、奥村くみさま
 
猛暑が続いていますね。我が家のバルコニーのプランターでは、大好きな紫蘇が大きな葉っぱを沢山広げています。

前回のお手紙は磁場力の話でしたね。とっても好意的に私について推理してくださってありがとうございます。奥村さんの並外れた磁場力の強さは周知のこと。私も磁場力に引き寄せられたひとりですから。一人で判断して、一人で行動して、磁場力鍛えて、何か面白く楽しいことを皆さんと共有でき、後でふと気が付いたらご縁をお返しできていた!なんて素敵。そうなれるよう精進いたします!

春先からイベントが立て続けにありました。いろんな世代の人と仕事を通してお付き合いをさせていただきました。みなさんいろいろな考え方があり、個性があり、時間を共にする中で、自分自身やリネンアンドデコールについて深く見つめ直す良い機会にもなりました。20代前半の若い人から学ぶことも多いし、子育てと仕事を両立しながら頑張っている人や、大きなビジネスを世界で繰り広げてきた年上の人や同年代の人から学ぶことも多い。いろんな世代の方々とお話しする機会を得られて自分はラッキーだなぁと最近つくづく思います。そして今私がこの仕事を続けていられるのは、こういった人たちとの有機的な繋がりがあって成り立っているのだと思っています。
 
先日、長くお付き合いのある桜山植物園という移動式の植物園を主宰する須田さんのイベントに参加してきました。彼女は2014年、2020年と2度に渡り、リネンアンドデコールのWEBをデザインしてくれた方で、コラム「リネンとおいしい時間」の名付け親でもあります。

話は少し長くなりますが、去年、桜山植物園の5周年イベントに伺いました。いろんなお花があったのですが、とっても野生味あるカップ咲のコスモスは、実は須田さんがタネから育てたものだということを聞きました。そして、、話を更によく聞いてみると、なんと、私が以前から気になっていた三浦の農園の一角を借りて育てられていたのです。私は趣味で野菜を育てていていろいろ情報収集しているのですが、以前とあるシェフのインスタでこの農園を知り、ずっと気になっていました。なんという偶然!自分のイベントもひと段落して、次のコラム「リネンとおいしい時間」は須田さんのFarm Gardenのことを取材したいなあと思いっていたところ、タイミングよくその農園で今回のイベントがあったので、取材も兼ねて参加してきました。タイトルは「夕暮れの畑で花と野菜を楽しむ会」。タイトルからして素敵でしょ?笑

私は少し早めに行って地図を見ながらゆっくりと農園を散策させてもらいました。傾斜地に点在して豚や鳥が飼育され、農地を結ぶ小径を歩き進むと視線の先には三浦半島の海を見下ろす素晴らしい景色。大切に育てられた無農薬野菜の販売は畑の脇にある無人の小屋での量り売り。信頼関係があってこそ成り立ちます。その小屋の前には須田さんの花とハーブの畑が広がっていました。花畑の隣には、太い柱と竹で組んだ棚があり、その下に置かれたロングテーブルでワークショップが開かれました。
 
ワークショップはいつも自分で使っている花器を持参し、須田さんが育てたお花畑で、自分が気に入ったお花を摘み、自分で生けるというもの。側では同時進行で薪に火をくべ、両手で抱えきれないほど大きなパエリアパンで野菜のパエリアを準備しています。パエリアは芭蕉の葉で蓋をして炊かれ、もくもくと立ち上がる湯気が幸せな気持ちを倍増してくれたのは言うまでもありません。須田さんのアドバイスを受けながら各々が好きなようにお花をいけ、参加者が十人十色の花いけが完成。その後は、テーブルにクロスを広げ、センターに生けた花器をずらりと並べ、皆さんとロングテーブルを囲んでのお食事。パエリアと、農園野菜のサラダと、農園のきゅうりのぬか漬けと、、白ワインを片手に、夕暮れ時の農園で、蝋燭の火をともしながら、風を感じ、虫の音をBGMにゆったりとした時間を皆で愉しみました。
 
花器と生ける花の高さのバランスの取り方、大きいお花と小さいお花のバランスの取り方などを教えていただきました。一番のポイントは「正解はない。自分で自分の心地よいものを見つけること」なのだと。。。
リネンも同じ。オケージョンに合わせて器やカトラリーなどの合わせを愉しむ人もいれば、毎日の暮らしの中で、気軽に使いたい人もいる。それぞれ、自分のスタイルや好みに合わせて取り入れて楽しく活用してもらいたいな、と思っているんです。自分はデザイナーではなく、ただの(ちょっと拘りの強い)リネンやさん。世代を超えて、色んな人たちに使ってもらえるよう、色んなお客様を想像しながら楽しくモノづくりをしていくのが私の目指すリネンアンドデコールらしさ、なのではないかと。
 
蒔かぬ種は生えぬ。明日はリトアニアから到着する貨物の受け入れ準備頑張りまーす。

それにしても、この農園でのひとときは本当に素敵でした。クロスを広げてテーブルを作った時に、あ、空間が何か変わったと思いました。エレガントなヨーロッパのファームに旅したような心地よさ。
真の豊かさってなんだろう。ただただナチュラルであれば、その他なんでもいいや、ってものでもない。奥村さんはどう思いますか?

 

草々
2022年7月25日
リネンアンドデコール 菊川博子

 

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菊川博子 プロフィール

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