新しいかたち

往復書簡十九通目

自分の畑で育てたキャベツ 


前略 奥村くみさま

気がつけば大寒の候。2022年1月も足早に過ぎ去ろうとしています。
昨年は5月の東京萩原邸、6月の奈良は明日香”こぉと“、そして11月には銀座蔦谷書店でのイベントと共に駆け抜けた一年でしたね。奥村さん、改めて昨年はありがとうございました!そしてお疲れさまでしたーーー!
私たちの「HouseからHomeへ」の小さな一歩、蔦屋書店でのトークイベントではアートやリネンの世界から広がって、本を通じて楽しいひとときを皆さまと共有でき、ただのリネン屋である私が新しい扉に一歩足を踏み入れた瞬間でもありました。共感してくださった皆さまと、蔦屋スタッフの皆さまと、どんな時も常にポジティブに(無茶苦茶早いレスポンスで)リードしてくださった奥村さんに改めて感謝の気持ちをお伝えしたいです。

さて、私は今、アート中之島で出会ったカーテンをモチーフにした写真作品を前にこのお手紙を綴っています。ふと目にするたびに前回のお手紙を思い出し(本当にご無事で良かったです)アート中之島の結束力の頼もしさに感動します。
この作品を初めて目にした時、心惹かれて、前に座ってみたり、近づいてみたり、何度も往復していました。ずっとそばに控えめに佇んでいて最後にお話しした方が作家さんだったんですね!ギャラリーの方かと思っていたのですが、最後に一言二言お話しした言葉が響いて「あ、この作品にしよう!」と決めました。今から考えると、お静かな中に湛えていた作品への深い愛情があって、それがテレパシーのように私の心に響いたのかもしれません。どうしても今まで落ち着かなかった我が家のリビングの壁の一つにぴったり収まっています。朝日の中、前面に映り込んだバルコニーの緑。作品のカーテン越しに見ているようななんとも不思議な感覚を日々楽しんでいます。

先日、アート中之島以来、再び大阪に行きました。三月のイベントに向けた打ち合わせだったのですが、、、ついで、と言ってはなんですが、京都の前から行きたかったお店の予約も取れたので、寄ることにしました。
そのお店は昨年、蔦屋書店をフラフラしていた時にたまたま目に飛び込んできた本の著者のお店。哲学の道のほとりにあり、季節の食材ととっても美味しいピザを楽しめるお店です。ここでも私の本領発揮。5時に到着した私は連れがなかなか来ないので「スミマセン、 遅れていて、、」と何度も冷や汗をかきながらお詫び。トイレに行こうと思って開けた扉は私が入店してきた扉!むちゃくちゃ薄着で外に出てしまったではないですか!居ても立っても居られないでいると連れが30分遅れて到着。本当にすみませんでしたとお店の人に言ったところ、、「あのもしかして、、、ご予約は30分からだったかと、、、」と遠慮がちに。「え?私30分先に来ちゃってたの?!」完全に勘違いしてました。私は勘違いだらけの人生なのですが、最後お店の人みんなと笑って話ができグッと距離が近づきました。怪我の功名です。

ピザやジビエももちろんおいしかったのですが、何より印象に残ったのは窯で焼いたニンジンや白菜などの冬野菜。滋味、甘み、それに加えて焦げた部分の香ばしさがギュッと詰まっていて感動しました。家では野菜をお味噌汁に入れたり、オーブンで焼いたり、グリルパンでお肉と一緒に焼いたり、はたまた蒸したり、と私なりに楽しんでいると思っていたのですが、この直火で焼いた野菜はなんだ!衝撃でした。東京の家に戻り、早速、畑に行ってキャベツを採り、くし切りにして、魚焼きグリルに投入。焦げ目の具合を見計らいながら焼きあげ、塩とオリーブオイルを少々。甘くて野菜本来の味が引き立つ美味しさで、あっという間に食べ切りました。もちろん、お店の味にはかないませんが、茄子以外も畑の野菜なんでもグリルで直火で焼くっていう手もあるのだな!とわかりました。こんな感じで、少し、家での食事が楽しく豊かになりました。単純です。

またコロナ大変な感じになってきちゃいましたが、やっぱり「家で楽しめる人は無敵です」。本もそうだし、アートやリネンもそうだし、また、料理もそうですが、素敵だなっと思った事を真似して気軽にちょっと取り入れてみる。そんな小さな好奇心が人生を楽しくするのではないかな。仕事も普段の生活もあまり境目なく、お互いの延長線上。こうやって楽しんで生活していくことが仕事にも繋がると信じて楽しい生活に邁進したいと思います!

さあ、2022年の「HouseからHomeへ」は何から始めましょうか!



 

草々
2022年1月21日

リネンアンドデコール 菊川博子

 

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菊川博子 プロフィール

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