新しいかたち

往復書簡二十二通目

中之島にある辰野金吾設計による日本銀行大阪支店  


前略 菊川博子さま

桜の開花も待ち遠しい今日この頃ですがいかがお過ごしでしょうか?私は先日一足先に満開の桜を楽しんできました。というのは国立新美術館ダミアン・ハースト桜展でのこと。長引くコロナ禍に加えてウクライナをめぐる混沌した世界情勢と心が塞ぐ毎日ですが、一瞬そんなことを忘れさせてくれたのがキャンバスに咲きほこる桜たちでした。展覧会を訪れた人々はきっと私同様ほんの少し晴れやかな気持ちになったのではないでしょうか?

さて今回の書簡では菊川さんに磁場力について投げかけてみたいと思います。時折一緒に仕事をさせていただくようになって強く感じるのは菊川さんの人を引き付ける磁場力の強さ。もちろんお人柄もあるのでしょうが、それ以外にもなにか特別な磁場力を感じるのです。それは菊川さんが今まで仕事を通じて取ってこられた行動が磁場力強化に繋がっているはずと推察しています。というのも実は私も磁場力が強いとよく言われるからなんです。

ただ私の場合は人柄が良いとか人格が優れているとかは全くなくて、やたらと磁場力が強いだけでお恥ずかしい限りなのですが、不思議な縁を手繰り寄せたり、私を軸に複数の人が繋がっていることが多かったり、数え上げるときりがありません。

大昔のこと、年上のお姉さま友人2人が(その2人が友人だったことは後で知ることに)私のことをお互いの年下の友人の話として話していたところ途中からあれあれ?となり、
「私たちってもしかして同じ子のこと話してない?」
「そんな気がする。もしかしてあの子?」
「せーので名前叫ぶ?」
と、知らないところで私の名前が大声で叫ばれたという話もありました。

磁場力ってどうやって培ってきたのだろう?改めてそう考えてみたところ一人で行動して一人で人に会って話をすることに尽きるのではないかと思い当たりました。私はインテリアコーディネーターを目指していた若い頃からいろんな場所を一人で訪れ勇気を振り絞っていろんな人に会いにいきました。一人で誰かに向き合うことで自分も成長したし、真剣に人の話を聴く訓練もできたと思います。だれかと一緒、その他大勢の一人だと相手方の記憶に残らず、残ったとしてもぼんやりとした輪郭でしかないのだと割と早い時期に悟ったのです。きっと菊川さんも同じように一人で行動してきた人だと思います。その結果として磁場力が鍛えられ今に至るのだと。(勝手に推理してごめんなさい。)

アートの仕事を始めた頃からはさらに一人行動に拍車がかかり、その時から今も変わらず座右の銘は「群れない・ぶれない・媚びない」。あるアーティスト曰く「奥村さんは一匹オオカミ」なんだそう。磁場力の強いオオカミ、最高です(笑)。

とはいえここ数年はいろんな方とコラボしたリ、手伝ってもらったりとしていていつも”群れない”訳ではないのですが、ずっと鍛えていた磁場力が今とても役に立っている気がします。そしてその磁場力の元「ちょっとくらい群れてもいいよね」という心の余裕が生まれたのかもしれません。前の手紙でリトアニアの女性写真家にコンタクトを取った話がありましたが「ふふ、菊川さんも相変わらず磁場力を鍛えてるわ」と心の中でクスッとなっていたのです。お互いこれからも磁場力を鍛えつつ集まってきた素晴らしいご縁をいろんな形で共有し、さらにはその方たちにもご縁をお返していこうではありませんか!

さて最後になりましたが先日の大阪でのイベントお疲れ様でした。ずっと関西で仕事をしながらインテリアズさんのショールームへは初めての訪問でしたがとても素敵なショールームですね。菊川さんをはじめとするイベントに参加なさっていた女性たちや、いらしていたお客さまたちもとても素敵で、あの場にいるだけでもワクワクする気持ちになりました。(もちろんあそこでも菊川さんの磁場力感じていましたよ!)

その際に東京からいらした方とお話していると「大阪ってすごくきれいになったわね。特にこの辺り(中之島)がこんなに美しい場所だなんて知らなかったわ」と言われました。アート中之島ディレクターとしてはとても嬉しく光栄の至り(笑)。神戸生まれの神戸育ち、今は奈良に住む私ですが、なぜか大阪愛がとても強いのです。それはたぶん大阪(中之島界隈)の街並みが私好みでとても美しいからだと思います。ブログ時代からずっと中之島は日本のパリと冗談めかして言っていたのですが、その昔大阪再開発の際に地形がパリに似ていることからその都市景観に倣ったという話を後年知りました。(私、間違っていなかったんだ!)さらに遡れば江戸時代には各藩の蔵屋敷があった場所。そんな風情もほんのり残っているせいか中之島は本当に素敵なエリアで大好きなんです。

以前ある方が「新大阪降りたら通天閣があるのかと思っていた」と真面目な顔をしていうのでびっくりしたことがあります。大阪って東京の方からすると今でもそんなイメージなんですね。とはいえ私のフランス語の先生に言わせると道頓堀当たりの混沌とした雰囲気はいかにもアジアっぽくてそれはそれでとてもいいのだと。フランス人に言われると「なるほどなあ」となってそれ以来すっかり道頓堀あたりはとてもアジア的でアリよねと思うようになりました。

そんな中之島から道頓堀まで川伝えにクルーズすると私がなぜ大阪が大好きなのかわかってもらえると思います。今度是非ご一緒しましょうね!

今日は磁場力から私の大阪愛まで盛りだくさんの内容でしたが、来月もお手紙楽しみにお待ちしております。



 

草々
2022年3月17日

アートアドバイザー 奥村くみ

 

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