新しいかたち

往復書簡十七通目

革のヘッドボードに麻のベッドリネン 


前略 奥村くみさま

近所の公園の木々が黄色や赤に色づきはじめ、秋の深まりを感じます。四季折々の植物を愛おしいという想いは、歳を重ねる毎に深くなってきています。

先日は“アート中之島”お疲れ様でした!各地のギャラリーや出展作品のセレクト、会場の設営やスタッフさんとの連携などなど、表には見えぬ沢山のご準備があったんだろうと思います。
一昨年に訪れた時にも感じたことは、心地よい暖かな空気の中、様々なアーティストの作品を一度に見られる、また、訪れる方々が、業界人やある一定の業種の方というのではなく、年齢や性別問わず、本当に自分の住まいにアートを探している人達なんだなぁと。今年は特に小さなお子様のいる家族連れの方々も多かったとおっしゃっていましたが、これは本当に素晴らしい事ですね。ギャラリーとは少し違った空間で、大勢の方にアートのある生活の扉をたたくきっかけを創っている奥村さんにあらためて惚れ惚れしてしまったのでした。そして私自身は6月“こぉと”で開催したイベントでお会いしたお客様達からも気さくにお声をかけていただいて、それもまた嬉しい出来事でした。

実はイベント開催前に奥村さんのインスタグラムの作品紹介をじっくりと見ていました。しかし会場では新たに写真作品に心がときめいてしまって、やはりアートは実際に見てみないと、、と思った次第です。被写体がカーテン(布)のドレープだという事を教えてもらい、程なく我が家に置いた時のイメージが頭の中に像を結びました。ばったりお会いした知人の方からも「イメージぴったり〜」と言われ家人とご満悦で帰宅しました。

時同じく10月の初旬、私は東京で約2年振りとなるポップアップを開催しました。会場をお借りしたエインテリアズの社長は20数年前に前職の会社で私を採用してくれて、それ以来、ずっとお世話になっている方です。根津美術館の斜向かいにあるこのお店は私の大好きなDe padova(デパドヴァ)というブランドの代理店でもあります。

前から好きだった空間でのインスタレーション。今回はカッコいいベッドやクローゼットをお借りし(なんと贅沢なことでしょう!)リネンをご覧いただきました。
ソファの布地やカーテンはあまり頻繁には変えられませんが、ベッドリネンやスローやクッショなどは比較的手軽に試せます。今回、石や、木や、革といった力強い素材の家具に、柔らかなリネンをミックスしたのですが、会場を作るときから既にワクワク。見慣れていたリネン達がより一層大人っぽい表情を見せてくれたのです。

そしてイベントが始まってみると、お客様から沢山のお話をいただき、私なりに発見もありました。365日、暮らしに欠かせないベッドリネン。やっぱりベッドには麻がいい!というコダワリでつくり続けています。ベッドリネンはホテルの関係者や、オーガニック製品のブランドの方、スタイリストや編集の方などプロの方の関心が高まっているようでした。皆さんからの刺激を受け、数年ぶりに新デザインを検討したいという意欲が首をもたげ始めました。イメージは刺繍やプリーツを削ぎ落としたシンプルなもの!!
ローブコートもずっと着てみたかった、と仰っていた方が次々といらっしゃいました。みなさん実物を見て気に入っていただいたようで、袖を通したお客様が「実際着てみると、スッキリ痩せて見える!」「この袖が可愛いよね」と喜んでくれて、私も嬉しくなりました。

そうそう、今回のポップアップを一緒にまとめてくださった女性は、なんとカトリーヌ・メミを日本に初めて紹介した方だったんです。こんな嬉しい出会いもあるものかとご縁を下さったK氏に感謝。彼女はウールやリネンなどといった自然素材の服地にも造詣が深いので、いろいろ学ばせて貰い今後のモノ作りに役立てたいです。

コロナの中イベントも気を使いますが、実際に見て感じてもらったり、直接お会いしてお話するというのは大切ですね。これからもひとつひとつのイベントを丁寧に企画し開催していきたいです。

さて、ウチに来ることになった美しい装丁の写真作品。
連続して飾ったら素敵に違いないと、今から楽しみにしています。

追伸
今朝、アート、届きました!!!


 

草々
2021年11月6日

リネンアンドデコール 菊川博子

 

奥村くみ プロフィール

菊川博子 プロフィール

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