新しいかたち

往復書簡七通目

畑の枝豆 


前略 奥村くみさま

目に鮮やかな新緑が美しく、頬に触れる風が気持ち良い季節ですね。今年の連休は2箇所に増えた小さな畑の世話と、アトリエと自宅の庭を整えるのに時間を使いました。植物たちもやっと世話をしてもらって、きっと喜んでいることでしょう。

お手紙、目頭が熱くなる思いで読み終えました。私も今まで幾つも試練を乗り越えてきて、それはやっぱり”リネンが好き”という気持ちがあったからで、過去に戻ることができたとしても、奥村さんと同様やっぱり「やってみる」という選択をするに違いありません。
奥村さんの明日香の奥のテントホテルプロジェクト、もちろん乗ります!ベッドリネンに限らず、極上のリネンを、一式まとめてご用意させていただきます(笑)

さて、私の妄想レベルの計画ですか?
いつもいろんな妄想をしていて、どれを書くか迷ってしまいますが、、、

まず一つ目。ラトビアに留学して、織物を学びたいと思っています。素敵な織物をつくる方法や、素材の調達方法を学んで、そして、日本の学校で学生に伝えて、若い織手がカッコいいものをつくって、お客様に喜んでもらって、、日本でそんな織手が増えるようになるといいな、と思うんです。

あとは、全然違うのですが、山奥にポツンと一軒家風のアトリエ兼自宅を建てたいです。窓の外は竹藪。小川が流れ、RC造のかっこよさと木や石、和紙や布が組み合わされた家。もちろん平屋のスキップフロア。大きなアイロン台常設のランドリールームも欲しいし、奥の部屋にはヨーロッパからアンティーク織機を輸入して配置。趣味で布を織り、トントン、トントンと機織りの音が静かな山あいにこだまするのです。
人里離れた山奥に住みながらもやっぱり今の仕事を続けていて、たまにポップアップができたらいいな(みんな辿り着けるかしら?)。 そして外には小さな畑があり、今の時期は大好きなイチゴを食べ放題。建物の中には、お気に入りの照明と、アイリーン・グレイの家具を置いて、毎日お昼寝。色抑えめのアートも飾りたい。勿論、奥村さんお願いしますね!

東京の街路樹計画っていうのもあるんですが、妄想話はこの位でやめておきますね。

そういえば、先日のリモート打ち合わせでウッディ・アレンの「インテリア」の話をしましたね。インテリアはその人の人生や生き方が如実に反映されるもの。奥村さんの感想をお聞きしながら、いろんなシーンをおぼろげに思い起こしていました。

もう一人話題に上がったナンシー・メイヤーズ。
リネンアンドデコールの設立前後、西麻布のハンプトンホームというインテリアショップによく行っていました。残念ながら今はもう無いお店なのですが、私にとってはモダン一色ではないインテリアの心地よさを再認識する場所でした。設立後、お仕事も何度かご一緒させていただいたのですが、ある日店主が「菊川さん、これお勧め。」と貸してくれたDVDがナンシー・メイヤーズの「Something’s Gotta Give/恋愛適齢期」でした。

この映画は、オシャレなインテリアでも話題になりましたが、私の中では、どちらかと言うと、ファッションについて深く印象に残っているんです。私が海外を訪れた際、旅先で釘付けになる素敵な女性は必ずホワイトパンツにベージュのトップス。カジュアルな装いの中に品の良いエレガントな香りのするオーラ。そう、その人達はまるでこの映画でダイアン・キートン扮する女性の出で立ちです。いつか自分もそんな雰囲気を身に纏えるようになりたいです。

私の妄想話が暴走したお手紙になってしまいました。インテリアと映画の話、今度また深く語り合いたいですね。

話しは180度変わるのですが(いつも飛んでしまってすみません(汗))、
私は健康のため毎朝アトリエまで自転車で通っています。30分くらいでしょうか。家から目黒川におり、三田用水の流れていた旧山手通りに上がり、と、坂の多い東京を感じられるコースです。そして、週一回のパーソナルトレーニングと、たまに五反田の鍼灸師にもお世話になってます。(この鍼灸師、すごいんです!)

お会いする度に思うのですが、いつもどんな時もかっこよく、お美しい奥村さん。何をされているのでしょうか。きっとなにか秘密があるに違いありません。ぜひその秘訣を教えて下さい。ココだけの内緒で。

草々
2021年5月7日

リネンアンドデコール 菊川博子

 

奥村くみ プロフィール

菊川博子 プロフィール

新しいかたち