新しいかたち

往復書簡一通目

登録有形文化財 萩原邸 居間  


前略 奥村くみさま

先日は、インテリアへの熱い想いを語り合った実りの多い打ち合わせでしたね。
さっそく昨日、スタッフりかさんとお皿やリネンを抱え、トークイベント会場となる萩原邸に下見に行ってきました。

初めてここを訪れたのは3年前の12月。主人の幼い頃からの音楽仲間(現飲み仲間)である友人のコンサートでした。モーツアルトのコンサートといわれて、最初は正直ピンと来ていなかったのですが、フランク・ロイド・ライトの愛弟子、遠藤新の建てた家が会場と言うことを聞き、途端に興味津々。ワクワクしながら訪れました。

そこでは、その友人がセレクトしたオーストリアワインを片手に、モーツアルトの曲を聞きます。友人はザルツブルグに住み、音楽活動やモーツアルト研究書の翻訳をしていて、演奏の合間にモーツアルトの人となりや生活を楽しくおかしく解説。皆、カジュアルな装いで集まり、私のようにクラシック音楽が身近でない人間でも、美味しいワインと素晴らしい生演奏をゆったりと楽しめる素敵な夜でした。奥村さんはライブやコンサートにいったりするのはお好きですか?

コンサート後、その家の主でありバイオリンを演奏された萩原さんが、お祖父様やお父様の仕事場でもあった書斎や主寝室として使っていた和室などを案内しながら当時の思い出を話してくれました。またお勧めしていただいた「ライト式建築」の書籍も拝読。実はこの度ご縁をいただき、著者の方にお会いして直接お話を聞くことができたんです。
どんなストーリーがあったのか5月のイベントの時に少しご紹介したいな、と思っているので、楽しみにしていてくださいね!

萩原邸は約100年前の建築当初、当時珍しい陸屋根の平屋建築だったそうです。今は都内のマンション暮らしを楽しんでいる私ですが、もしお金に糸目をつけず家を建てることができるなら、四方を緑に囲まれたスキップフロアのある平屋に住んでみたいな〜と思っています。
出張のトランジットで滞在したコペンハーゲン。一人で道に迷いながらオードロップゴー美術館を訪れた時、美術館の庭先でたまたま見つけて立ち寄ったフィンユールの家。周りの環境や間取りが私の好みにドンピシャ。それ以来、私のLINEのアイコンになりました。あの家に自分好みのインテリアを入れ、裏庭に畑を作ったら、理想の家になるな、とひとり妄想しています。

奥村さん、今ままで訪れた旅先で心に残っている街などありますか。 もしくは、偶然見つけたとっておきの場所などあったら教えてください。
 

草々
2021年3月14日

リネンアンドデコール 菊川博子

 

奥村くみ プロフィール

菊川博子 プロフィール

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